一週間後、ブラックジャックはシャルルに連れられ、
国立病理研究所にやって来た。
「オレは、ここの研究所長だ。君の事はスタッフ全員に伝えてある。
皆、優秀な人材ばかりだ。分からないことは彼らに聞け」
ブラックジャックは軽く眉を上げてシャルルを見た。
「君は、人望が熱いようだ。一見冷淡そうに見えるがそうでもない。
誠実で、思いやりもある。君のことをよく分かってるんだな、
ここのスタッフは。君の話をしたら、皆一同に、穏やかで
優しい表情になる。」
シャルルは、長いまつげを伏せ、小さく笑った。
「君が思っているほどこのオレは、綺麗じゃないよ。エゴイストで
独占欲のかたまりさ。事実、君がマリナの手に口づけただけで、
どうしようもないほどの嫉妬に駆られたしね」
ブラックジャックは首を振る。
「君はエゴイストではない。好きな女性に手を出されて、怒るのは
当たり前だ。そんなふうに自分を責めるな。私だって、ピノコを
誰にも渡したくないのだから」
「有り難う。そういってもらえて嬉しいよ」
シャルルは、気を取り直し、一冊のカルテを取り出し、ブラックジャックに
手渡す。「君が受け持つ、患者のカルテだ。名前は、シャルロッティ・バサ
ール。２５歳。�T型糖尿病だ。心臓病を併発し、かなり危険な状態だ。
治せるか？」
ブラックジャックは、眉間にしわを寄せ考え込む。�T型糖尿病。
生活習慣病からくる�U型糖尿病とは違い、何らかの原因で、急に
インシュリンが作られなくなる、難病だ。しかもそれに心臓病を併発
しているとなると、大変だ。私にできるか・・・・？いや、治してみせる。
意を決したように、ブラックジャックは顔を上げ、シャルルを見た。
「やってみよう、ただし」
「なんだ」
ブラックジャックは、少し考えて口を開いた。
「君と一緒に治療に当たりたい。私一人で無理だと言っているのではない。
挑戦状を叩きつけたことを詫びたいのだ。君と一緒にやらせてくれ」
シャルルは驚いて眼を見開く。神業的な手術の腕を持つ彼が、自分と
一緒に治療に当たりたいと言うなんて。胸に温かい物がこみ上げてくる。
「こちらこそお願いするよ。ありがとうブラックジャック」


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