運命の対決２

数日後、シャルルがいつものように執務をこなしていると、
マリナの小さな悲鳴が聞こえた。
どうした、マリナ！
慌てて、部屋を飛び出し声の聞こえた方へ向かうと、
そこには黒ずくめの男が。
黒いマントに、きらりと光る黒い瞳。ブラックジャックだ。
傍には、彼の愛する恋人、ピノコもいた。
マリナは、ただ声も出ず、立ちすくんでいたが、シャルルの
姿を見つけると、あわてて彼の背中に隠れる。シャルルはマリナを
庇うようにブラックジャックの前に立ちはだかると静かに口を開いた。
「厳重なこの屋敷の警備をかいくぐって、堂々と入ってくるとは
見上げた根性だな。名前を言え」
ブラックジャックはふっと笑うと、口を開いた。
「本名は、ハザマ・クロオ。だが世間ではブラックジャックが通称だ。
私の名を知らないわけではあるまい？世に名高いシャルル・ドゥ・アルディ
君」シャルルは、あからさまに嫌な顔になった。
「気安く、君づけをするな。吐き気がするぜ！」
「これは失礼」
マリナは、シャルルの背中からこっそり顔を覗かせ、二人の様子を見守って
いた。ブラックジャックの話は、風の便りによく耳にしている。
神業的な彼の手術の腕と天才外科医シャルルとの対決。
これは見ないわけには・・・・・。
と、彼女はふとブラックジャックとばっちり眼があってしまった。
や、やばい。考えていることがばれたかしら。
そう思っていると、なんとブラックジャックは優雅に彼女に歩み寄り、
マリナの手をそっととり口づけたのだ。
「先ほどは、驚かせてすまなかったね。私は医者だ。君の恋人に
どうこうしようって訳じゃない。安心してくれ」
低く、それでいて穏やかな声音。マリナは、彼が悪い人ではないことを
改めて確認した。
いっぽうのシャルルはというと、手の甲とはいえ、自分以外の男が
彼女に口づけたことに、どうしようもない憤りを感じていたが、
なんとか自分を抑え、ブラックジャックに向き直った。
「今日は忙しい。日を改めて会うことにする。それから、勝負の件だが
オレは、患者を勝負事に使うのは、良心に反するので受けない。
その代わり、今オレが受け持っている患者の治療をお願いする。
かなりの重症だ。完璧に治してくれたなら、君を友として受け入れよう。
もし、直らないか取り返しのつかないミスをしたならば、君との仲は
これっきりだ。いいな」
ブラックジャックは、満足そうに頷く。
「よかろう。では、連絡を待っている」
玄関をでて、車に乗り込みながら、ブラックジャックは内心舌を巻いてい
た。あの男、ただものではないな。

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