ほんとうの心は？
月が高くなる時刻。
聖地の全てが寝静まっていた。
ただ、女王候補の寝泊りする、寮の一室を除いては。
「ランディさま・・。」
かすれた声が、少女の昂ぶりを表していた。
少年が、彼女の唇を優しく塞ぎ、そっと舌をからませる。
「ん・・ん」
アンジェリークは、柔らかい髪を揺らし、熱く応えていく。
「アンジェリーク、好きだ・・よ。」
唇を離すと、ランディはアンジェリークの首筋に唇をすべらす。
「は・・あ・・。」
肌の粟立ちを確認すると、彼は彼女の耳に唇を寄せ、そっと舌を入れた。
「あ・・ん。」
「アンジェリーク、気持ちいいかい・・？」
「あ・・。」
アンジェリークは、ランディの直接的な問いに、とまどい、瞳をうるませた。
「もっともっと、気持ち良くなって。」
ふわふわと、ランディはアンジェリークの胸の膨らみの感触を楽しむと、不意に柔らかい突起にそっと触れた。
「は、んん。」
ランディは、そのまま突起を親指と中指でつまむと、人差し指で転がしていく。
反対側の突起は、尖らせた舌先でつついたり、転がしたりしていた。
「い・・やん・・は、ん。」
アンジェリークは、堪えきれず、ランディの髪をつかんでいた。声を必死で絞りながら。ランディは、顔をあげ、そんなアンジェリークを、哀しげに見つめた。
（こんなに、声を押さえてるなんて・・。）
「アンジェ。」
ランディは、そっと彼女の足を開き、熱く湿っている場所に指をすべらせた。
「濡れているよ。感じてくれているんだね。」
「ラ・・ンディさま・・。」
アンジェリークは瞳を開くと、涙を浮かべた。
「ランディさま・・。恥ずかしい・・。でも、でも・・、私。」
「さっき、言っただろ。もっと、気持ち良くなってって。恥ずかしがらなくっていいんだよ。」
ランディは、彼女の中の奥深くに、指を差し入れた。ゆっくりと中で動くと、暖かい蜜がとめどなく流れ出てくる。
「あ、ああん。・・は、ん。」
流れ出る蜜を、舌で舐めとり、さらに尖らせた舌で、秘部の突起をつついて転がしていくと、アンジェリークは堪え切れず、腰を浮かせた。
「だめ・・。あ、私、とけちゃいそう・・んん。」
「俺も、なんだか君の声を聞いてたら、我慢できなくなってきちゃったよ。」
浮き上がる腰を押さえ付け、ランディは昂ぶる自分自身を、彼女の中へ進めていった。
「あっ！」
思わず声を出してしまい、アンジェリークは自分の手近に置いておいた、小さなタオルを口元に持っていき、ぎゅっと噛み締めた。
（私が、私じゃなくなっていく時・・。）
開かれた足。あられもない格好をして、男性を受け入れている自分。
恥ずかしさを上回る、怒涛のように押し寄せる快感に、身をまかせていく。
深く、深く彼女の中に入っていくランディ。たまらず腰を動かし、昇りつめていく。
「俺、もう、だめかも、」
「待って！ランディさま。・・わ・・たし・・も！」
きつく抱き締め合い、一緒に体を震わせる。気を失いそうなほど、彼女は達してしまっていた。
「アンジェリーク。」
口を開いたのは、彼が先であった。
終わった後に、あらためて話をしたことは１度もなかったので、アンジェリークは後ろを向いたまま、ビクッと体を震わせた。
「君は、俺のこと、どう思っているんだい？」
アンジェリークはこの問いに、稲妻に打たれたような衝撃を受け、飛び起きながら振り向いた。
「どうって？・・どうって、どういうことですか？そんなこと、何で聞くんですか？」
驚きとショックのあまり、彼女は唇を震わせていた。普段おとなしい彼女から考えれば、驚くほどの強い意志を、その瞳に宿していた。
「ご、ごめんよ。だって、俺、自信ないんだよ。俺と君が、こんな風になって、もうだいぶたってしまったけれど、君の本当の気持ちは、まだ聞かせてもらったことないだろ？」
ランディはすまなそうに体を起こし、アンジェリークの手を握った。
「・・たとえ、ランディさまが、私のことを、からだだけの相手だと思っていたとしても、私はランディさまが好きです。・・ランディさまに会えなくなってしまう日のことを考えるだけで、私、怖くて・・」
アンジェリークは大きな瞳から、ぽろぽろと涙をこぼした。
「アンジェリーク・・。俺と君が会えなくなる日・・。君は、女王になりたいのかい？」アンジェリークは、瞳を大きく見開き、ランディを見つめ直した。
「女王にならないって、言ったって、ランディさまと一緒にいられないなら、同じじゃないですか。」
「そんなことは分からないよ！アンジェリーク。俺は君が好きなんだ。俺は君なしじゃもういられない。こんな形で君を傷つけてしまって、君は、信じてくれないかもしれないけど、俺は、君を大切に想っているんだ。ずっと君といたいんだよ。」
「ランディさま・・。そんな、ムリです・・。」
アンジェリークは、両手で顔を覆い、しくしくと静かに泣きだしてしまった。
「あきらめないで。一緒に考えよう。みんな、きっと分かってくれる。陛下もロザリアも。俺は・・・その。君の声を、ちゃんと、聞きたいんだよ。」
ランディは頬を赤らめると下を向いた。
「君はいつも俺の腕の中で、声を出さないように、必死で堪えてくれていた。でも、もうそれは今夜で終わりにしよう。声を、出して、感じてほしい。」
「ラ、ランディさま。」
涙をこぼしながらも、アンジェリークは頬を染め、ぎゅっとランディにしがみついた。
「今日はここに泊まるから。ゆっくり、みんなを説得する方法を考えよう。」
「・・はい。」
小さくほほ笑み、アンジェリークはうなずいた。
どちらからともなく、だきしめ合い、再び唇を重ねる。
− ふたりの試練は、始まったばかりだった。 ［完］
こめんと
どうも、お目汚しの作品ですが、少しは楽しんでいただけましたでしょうか。
かなり、現実にありそうな話にしたつもりだったんですけど。
春見さんはあえて「温和」ちゃんじゃなく「内気」ちゃんが好きとよく言ってらしたので、自分としては、「内気」ちゃんとして書いてみたつもりです。
まあ、どちらでもいいんですけど・・。
この二人、最後どうなるのかと少々気を揉んでおりましたので、心も通じ合い一安心です。
女王候補と守護聖という禁忌を破ってほしいですね。マジで。ありがとう、ユミさん。