熟れる想い
「愛してる。永遠に、君だけを愛してる」
シャルルの胸の中へと引き寄せられ、耳元で囁かれた言葉の熱っぽさと、頬にかかる甘やかな息で
あたしは心臓がおかしくなったのかと思うほど、ドキドキしていた。
「シャルル、あ、あのね…」
濃い紫色の闇の中であっても、シャルルの美貌は辺りを照らすぐらい輝いていて、こんな綺麗な人から
これほど熱烈に求められて、あたしは戸惑っていたのだった。
でも、そんな杞憂はあっという間に吹き飛ばされる。
「もう離さない」
そうシャルルは呟くと、あたしの唇に自分の唇を強く押し当てた。いつもは冷ややかで理性的なシャルルが
恐ろしいまでに情熱的にあたしの口の中で暴れた。
あたしはただただ為されるがまま、シャルルに身をまかせていたのだけど、そうこうしているうちに、
シャルルが不意打ちに、あたしの舌を強く吸ったのだった。
ボーっとしていたあたしはそれこそ電撃を受けたかのような衝撃に襲われ、突然の出来事に
何も考えられなくなっていた。
「ん…んふっ…」
息もできない苦しさと、何故だか分からない痺れとで、あたしは混乱していて、いつあたしが服を
脱がされたのか、ぼんやりとしか思い出せない。
こんなキスをあたしは知らなかった。
身体の奥底から、押し留めようとしても涌き出る熱に押し流される。
あたしの二の腕を掴んでいるシャルルから逃れようともがくけれど、拷問を受けて弱っているはずの
シャルルは、思いのほか強くて、とても離してくれそうにない。
もう限界だと思った瞬間。
シャルルはあたしの口から自らの唇を引き離し、耳たぶにそっとキスを落とした。
「マリナ…マリナ…」
呟き続けるシャルルを横目に、息ができる安堵感にホッとしたのも束の間で、あたしは嵐の中の海に
投げこまれた時と変わらないぐらい翻弄された。
耳たぶから首筋、鎖骨へとシャルルの唇が動く度に、触れられたところからわけの分からない感覚が
あたしを苛むのだ。
「何…何なの？…こんなの知らない」
思わず叫ぶと、
「怖がらないで…マリナ、オレは君を壊さないから…」
シャルルはあたしを宥める。それでも、しっかりとお世辞にも豊かとは言えない胸に、シャルルの掌が
包み込んでいた。
「ちょっと…止めてよ。恥ずかしいから」
しかもシャルルは、指の間であたしの胸の先端を挟んでいた。ちゃっかりとあたしの胸が反応している。
こ、これって、やっぱり…
「マリナ、オレだけを見ていて…恥ずかしがらなくていい」
これからのことを想像するだけで、あたしは恐ろしくなる。
あたしがあたしでなくなるようで…
怖さのあまり、あたしはシャルルの目を覗きこんだ。
シャルルもまたあたしを見つめている。
切なくなるほど。
長い間、シャルルの眼差しを受けているうちに、催眠術にでもかかったかのごとく、あたしはシャルルの
首に腕を廻した。
怖がっているあたしの気持ちを察したのだろう。シャルルは繊細な指先であたしの髪を撫でる。
腕全体であたしを抱きしめ、子供をあやすようにあたしを揺らし続けた。
気長に…粘り強く。
大切に想われてるというのが、ダイレクトに伝わり、あたしはシャルルの想いを強く感じて
「後悔しない？ ねえ、ホントにあたしとこうなって後悔しないの？ あたし、何もできないよ。あんた
みたいに頭いいわけじゃないし、それでもいいの？ 」
「あのね、マリナちゃん、さっきから言ってるだろう？ オレには君だけだ」
浴びるほど注がれるキス。優しい眼差し。触れあう身体の熱。そのすべてを感じてるうちに
あたしはあれほど恐れていた不安が消えていることに気付いた。
「もう大丈夫…シャルル…どこまでも一緒よ。怖くないわ」
その夜、あたしたちは結ばれた。
あたしの身体は、こういうことに慣れてなくって、身体の節々が痛かったけれど、痛みよりも強く
温かい肌と肌と触れ合ってる感触が何よりも得がたいことに気づいた。
シャルルとこうなって、あたしは初めて人と関わるというのがどういうことかを思い知った。
こんな経験をしてしまったら…あたしは…もうシャルルから離れられない。
「マリナ…身体大丈夫？」
心配そうに覗きこみながら、シャルルはあたしの頬にキスをした。
「ちょっと痛いけど、平気よ」
あたしはシャルルの胸に顔を埋める。照れ隠しのために。
「ごめん、あまりに君が可愛すぎて、何もかも愛したくて…つい…」
いつも自信たっぷりに振舞ってるシャルルのセリフとは思えないほど神妙な言葉に、あたしも感極まって
しまったのだった。
愛されて、あたしは幸せだ。
「いいの…シャルル、あたし分かったわ。どうして愛を確かめ合うのに人は抱き合うのかってのが。
百の言葉よりも、十のキスよりも、たった一度抱き合うだけですべて分かってしまうのね。あんたが
どんなにあたしを愛してくれたか、あたしにも理解できたよ。シャルル…ねえ、あたしはあんたを
ちゃんと愛せたかな？」
そうあたしが早口で言うと、シャルルは目を見開いて、マジマジとあたしを見つめ続ける。
「マリナ、君は最高に素敵だったよ。オレは初めて生きていてよかったと、心の底から思えたし、
君がいてくれるだけで、こんなにも力がみなぎってくるんだ。だから、どんな困難が待ちうけていても
きっと乗り越えられるよ」
嬉しそうに微笑むシャルルがあたしの唇にキスをした。
これから先のことはどうなるか正直分からない。でも、あたしはシャルルについていこうと思う。
未熟だったあたしは、シャルルの手によって、熟していこうとしてるのだから。
愛は甘美なパラドックスで、シャルルの最後のセリフ
「では諸君、今度こそアデュー」にぶち切れたのが8年前。ホントにホントに、あれはないよって
涙しました。藤本先生に納得できないという手紙も出したな〜。若かったよ。私（笑）
で、今回、またマリナシリーズを読み返して、やはりパラドックスの１００Pのあの扱いに、どうにもこうにも
納得がいきませんで、私なりの解釈を持ちまして、書かせてもらいました。
やっぱり、あの場面で、普通寝ませんよ。でも、これは言っても仕方ないので割愛するとしても、
むろんコバルトという制約はあったにしろ、雀チュンチュンでもいいじゃないの〜。あそこはぜひぜひ
結ばれて欲しかった。これは私の願望だけど。まあ、それを除いても、いきなり響谷兄妹のことがでるとは…やはり穿った考え方をすると、無理やり終わらせようとしか思えない。（考え過ぎかもしれないけど）
シャルルがね、「一生分の夢は見た」なんてね、言うでしょう？ 長く続くであろう人生のうちの
ほんの少しだけマリナと行動して、キスしただけで一生分ですか？ 無論、精神的な愛も重要です。
しかし、それ以上に肉体も伴ってこそ、一生分だと私は思うのです。しかも、その時は、マリナだって、
シャルルでいいと思ってたんだし、（一時的な気の迷いにしても）、私はもうシャルルが不幸で見て
いられなくて、どうしようもなくって、ついこういう話を書きました。もし、こういう風に肉体的にも結ばれて
いたならば、例え別れが訪れようとも私は文句をいいません。
どうしてここにこだわるのかといえば、身体と精神とは連動しており、その両方が一致しないと
至福の境地は味わえないと私は考えてるんです。
一生分というのなら、その両方を味わわせたいという私の切なる願いで、出来た話です。
マリナを嫌う人も多いですが、私はマリナ好きなんですよ。だってあの子は自分に正直です。
それ以上にちゃんと人を守ることができる馬力のある女の子ですし、もちろんヤな部分もありますが、
それでも押さえるところはきちんと押さえてる。その部分が、私にとっては好ましいんです。
そんなマリナだからこそ、シャルルだって好きになったんですから。
私はシャルル×マリナですけれど、だからと言って、私は和矢が嫌いではありません（誤解しないでね）
美女丸だって好みだし、カミルスだって素敵だってフラフラしてますもの。この点、マリナと一緒ですな（笑）
だから、はっきり言えば、これは私の自己満足自慰小説というべき類のものです。ならばひっそりと
自分だけで見ていればいいと思われるでしょうが、やはり同志も欲しいんです〜。
これみて私とシャルル×マリナ話をしたいというお方。ぜひぜひお話しましょう。飢えてます。私。
しかし、あとがきで熱く語ってしまったわ。ダメね（笑）濃い人だってバレバレ。