捕食者
トクントクンと、胸の鼓動が聞こえてくる。
頭をずらせば、そこにシャルルがいた。
ああ、あたし、シャルルに抱かれたんだ…
ぼんやりとした頭で、昨晩のことを思い出した。
蔦が絡まるようにシャルルの腕が巻きついていて…これ以上ないほど密着していて…
シャルルの身体全体であたしを包み込んでいるような、そんな感じであたしはシャルルと
一緒に寝ていた。
うっ、何だか気恥ずかしい。
シャルルを起こさないように、そっと身体を滑らせて、あたしはベッドから降りた。
裸って気持ちいいんだなぁって、新たな発見をしてあたしは窓辺へと向かう。
シャルルから、とにかく離れていたかった。
窓の外はまだ薄暗い。
冷たい空気に身体をさらしていたかった。
何をするわけでもなく、ずっと外を眺めている。
段々と空が白みはじめてきたのに、なのにまだ、身体の芯から熱さが消えない。
あのジュースが始まりだった。
靄がかかった頭の記憶を手繰り寄せてみるけれど、酷く頭が痛い。
甘いジュースの中に少しの苦味が混じってて、何だか身体がうずうずしてきて
とっさにあたしはシャルルがお酒を入れたのかとおもったの。
シャルルの繊細な指があたしの髪を梳いてるなぁと思ったら、押し倒されてしまって
「何をするのっ、シャルル」
あたしの抗議なんか聞きもしない。
「愛してるマリナ」
背筋を走るゾクゾクとした感覚が潮が引くようにひいた。
愛してるって…
あたしは和矢だけなのに。
そしてやがて、熱という波があたしを襲ってきた。
身体中がカッとなって、まるで自分の身体が自分じゃないみたいになって。
こんな感覚知らない。
何かをあのジュースに混ぜたのだとわかって、
「さっき飲んだジュースのせいなの？身体が熱い。あんた変なもの飲ませたわね」
と、シャルルに問いただしたら、
「天使のカンタレラという秘薬は、二人一緒に飲むと永遠に愛し合うという。 君と離れないために
オレはカンタレラを飲ませた。昨晩、君の心がオレにないことを知ったから…オレはこういう手段に
出た。許してくれとは言わない。最初に言ったはずだ。騙してでも手にいれると」
シャルルはそういうと、あたしの着ている服を剥ぎ取った。
仕組まれたことに最初は憤っていた。シャルルがこんなことをするなんて
信じられなかった。
でも、あたしを押さえ込む強い力が、シャルルが男だってことを否応無く知らしめて。
あたしは初めてシャルルを怖いと思った。
昔テレビで見た、サバンナに住む肉食獣が餌を捕らえるときの目と、シャルルの目が一緒だったから。
あたしはシャルルに殺されてしまう。
逃げられなくて、助けて和矢と、叫ぼうとしたけれども声が出なくて、なのに身体は痺れてしまって
動けなくて…
シャルルの舌はあたしを絡め取ろうとするように、あたしの口内を暴れ尽くした。
息もできない苦しさの中で、あたしは死の恐怖に怯えていたはずだったのに…
断末魔の悲鳴をあげるかわりに、あたしが洩らしたのは甘い吐息。
そう…あたしは捕らえられたのだ。
シャルルに触れられるだけで、身体の奥底から火を熾された感じで熱くなって
あたしの身体が溶けていくようで…
あたしの身体中を、シャルルは繊細な長い綺麗な指で撫でさすり、柔らかな唇で触れ、
あたしの中に眠っていた何かを引き出そうとしていたのだった。
シャルルから与えられる刺激を一身に浴びているうちに、
誰に教えられたものでもないのに、身体が自然と動き出して。
身体の中に起こった変化をシャルルは見逃さなかった。
あたしの知らない何かが、あたしの中から出てしまう。
こんなのあたしじゃない。
「マリナ、愛している」
ぎらついた目から一転、優しい光をたたえて、シャルルはあたしをみる。
きっとシャルルは待ち望んでいたのだろう。こうなることを。
だから強引に私を騙したんだろうと気づいた時には…
肌と肌とが重なり合い、柔らかな舌で舐められるくすぐったさと、滑らかな歯の感触がおこす快感に
あたしはわけがわからなくなる。
シャルルにしがみつくことしかできなくて。
もう、シャルルだけしか見えなくなって。
「シャ、シャルル〜」
どうなるのだろう…あたしは。
和矢を愛していたはずなのに、あたしは流されて、シャルルを求めてしまってる。
乳首を吸われて、あたしはのけぞる。
甘い疼きが全身を駆け巡り、堪えきれず声は洩れてしまう。
こんな声をあたしがあげるなんて…
それは歓びの歌。
快楽の予感に震えながら、あたしはやっと理解した。
シャルルが引き出したのは、私の欲だったんだ。
残酷なまでに優しいシャルルの牙で、今までのあたしは引き裂かれた。
そして目覚めたあたしの欲が、シャルルに食べられるのを待ってる。
「どうしたんだろう。シャルル、あんたがとっても愛しくてたまらないの ねえ、どうして？」
浮かされて、あたしは呟く。
勝手に身体が、求めてしまう。
ごめんなさい、和矢。
あたしは今までのあたしじゃなくなるから…
シャルルの手が、舌が、そして目で、あたしを絶頂へと導こうとする。
導火線に火が伝うように、全身に熱が行き渡り、あたしはただ熱くなるばかり。
「ああっ、ダメ… そんなところ恥ずかしい」
シャルルは動きを止めない。むしろ執拗にあたしを貪る。
頭をずらして、誰にも触られたことのない、あたしの秘められた場所にキスをした。
「あっっ、いやっ…はぁっ…」
嫌とは口で言っておきながら、腰は動いてる。
言葉と裏腹に、恥ずかしさよりも勝る欲が、もっと貪ってと願う心が
あたしを淫らにさせていくのだろう。
互いの汗のせいで、シーツは所々にシミをつくっていた。
指や唇で、触れ合って、肌はぬめりを帯びていく。
濡れた音と、喘ぐ息づかいが、生々しく部屋に広がり響く頃
「マリナ…オレが欲しい？」
シャルルが問い掛けてきた。
プラチナブロンドの髪に隠れて表情を読み取ることはできなかった。
あたしの頬に落ちる雫。
それは汗なのか、それとも涙だったのか…
あたしを騙してまであたしを欲したシャルル。
きっとシャルルは泣いているのだろう。
プライドが高いから、決して認めはしないだろうけれど。
そこまでシャルルを追い込んだのは他ならぬあたしなのだ。
心が痛くなる。
この身体を与えたら、シャルルは満足するだろうか…
捕らえられたあたしにできるのは…
「来て…シャルル」
あたしは両脚を広げ、シャルルを受け入れる。
捕食者に食べられる瞬間、餌となる動物は何を思うのだろう。
死の恐怖に震えるのだろうか。
それとも生まれ変わる歓びに胸をときめかしているのだろうか。
シャルルの熱い愛撫に翻弄されながら、昇り詰めた瞬間。
あたしはシャルルの獲物となった。
朝日を浴びて、身体に昨晩の情事の刻印があからさまに残っているのを
見つけて、あたしは小さな溜息を落とす。
夢中になってシャルルを求めたのは、薬のせい？
それとも…あたしが持ってた欲のせい？
自分で自分がわからない。
シャルルを追い詰めてしまったのはあたしだから…食べられても
仕方ないと思っていた。
でも、あたしが獲物であるならば、そのまま捕らえられて食べられたらお終いだけども
実際はそうじゃない。あたしはまだ生きてる。
そしてこれからシャルルと向かい合わなければならない。
どんな顔すればいいんだろう…
「マリナ…」
振り返るとシャルルがベッドから身を起こして、あたしを見ていた。
「オレからどうして逃げるんだ？」
声のトーンが低い。
「逃げる？」
あたしの声もまた掠れている。
「オレが…怖いのか？」
シャルルがこっちに近づいてくる。
射抜くほどの強い光をたたえた目であたしを見つめる。
動けない。
「…………」
目を伏せて、あたしは狩られる瞬間を待つ。
「マリナ…」
シャルルがあたしを抱きしめる。
触れられた場所から、シャルルの熱が伝わってきて…
熱くなるのはあたしだけじゃない、シャルルもそう。
「逃がしはしないよ。マリナ 可哀想だけども…もう君はオレのものだ」
あたしの背骨をなぞるシャルルの指先が、一気に滑りあがる。
その動きがあたしを震わせてしまう。
「…シャルル…」
身体は正直。
与えられる沢山のキスと、あたしを撫でる優しい腕に、酔ってしまって
そのままシャルルに身を任せて…
「それでも愛している…マリナ」
言葉も沁みていく。
あたしの喉元に当てられたシャルルの歯が、これから容赦なく食い尽くされる証。
ならばいっそあたしを丸ごと噛み砕いて…殺して欲しい。
あたしを生かさないで。
だってあたしはもうあたしじゃないんだから…
あなたに食べられるただの食物
Ｎｕｉｔの続編というか、マリナ視点からの話です。もう原作なんか完全無視な私の自己満足自慰小説
なのですが、私はどんなにシャルルが尽くしても、マリナちゃんからは恐怖心は消えないと思うのです。
ちゅーぐらい、シャルルという男は恐ろしい男だと思うのです。それをマリナちゃんがわかってるからこそ、
原作ではシャルルから逃げたのだと考えております。 もうこれは自分の中で決定事項でございまして
そんなマリナちゃんをどうやって、シャルルに振り向かそうというのを常々考えてましたら、
スカイパーフェクトＴＶの音楽番組で韓国のヒットチャートをしてたのですが、そこでＢｏａのＶＡＬＥＮＴＹが
流れていたわけなのです。で、何となく眺めておりましたら、日本語と意味が違っていたのです。
びっくりしました。ですが、韓国語訳のほうがシャル×マリっぽくていいぞ〜と、私は萌えました。
それをヒントに、マリナちゃんがシャルルに捕らえられた話を書いてみたのです。
こういうことを私は平気でいっちゃいますが（笑） 身体だけの関係であってもいいんじゃないかと思うのです。快楽に溺れてシャルルの世界に閉じ込められる。だからこそ離れられない。
心も身体も両方が一致すればいいのですが、一致しない場合もある。
だけども、シャルルからは逃げられないってのは、ものすごーく耽美じゃなかろうかと、
耽美大好きな私は空想に耽るのです。
しかし、これはもうマリナではないです。私の願望モロ反映です。いいじゃーん、
だって電波小説なんだし（完全開き直り）
でもね、シャルルぐらいの男に請われたら、私は受ける。彼の情熱は半端じゃないですもの。
だからこそ誰も経験できない世界を体験できるのではないだろうかと。
そしてかなりのシュール
ま、私の好みなんだからしかたね〜（完全電波だ(笑)）
だけども私の我侭に付き合ってくださってありがとうございました。春見がチャットにいた時には
エロ話しましょ（お