薔薇の記憶
目を開けると、白銀の髪とブルーに近い灰色の瞳の
とても綺麗な人が、あたしを見ていた。
綺麗な人・・・。
周りを見てみると、ここは病院みたい。色々な機械が置いてある。
あの人はお医者さんかしら。
黙っていると、彼は、あたしに声をかけた。
「黙っているなんて、君らしくないな。大丈夫か？」
やさしい瞳で、見つめ返している。
「あ、あの・・・ここは何処ですか？・・・・あなたは・・・・」
あたしがそう言うと、彼はいらただしげに
「少し待っていてくれ。」
そう言って、電話で何か指示している。
あたしは、誰？ 何も覚えてない・・・。
あの人はあたしを知っているの・・・・？
少しすると、あたしは色々な検査をした。
検査をする前に、お医者さんらしき彼は自分はシャルルだと言った。
検査が終わると、シャルルはあたしに、今起こっていることを教えてくれた。
「君は、病気になって一時的に、記憶障害を起こしているんだ。
そのせいで今は、何も覚えていない。でも、徐々に色んなことを
思い出してくるよ。俺の事もね。その為にはまず、体力を回復させなけりゃ。
今は、焦らないで。ずっとそばにいるから。」
「それから、君の名前は・・・マリナ・・さ。」
そう言うと、シャルルはやさしく微笑んで、おでこにそっとキスをした。
それから数日たったある日。
あたしはシャルルに連れられて、バラの花の温室に行った。
中に入ると、赤、ピンク、黄色などの様々な品種のバラが咲いていた。
シャルルに声をかけようと振り返った瞬間、
突然目の前に、色んな情景が浮かんできて、崩れるように倒れこんだ。
薄れてゆく意識の中で、あたしはシャルルに抱きとめられた。
気がつくとそこは、シャルルの部屋であたしを覗きこんでいた。
「シャルル」
あたしがそう言うと、シャルルはほっとした様子で
「気分はどう？温室で急に倒れたんだよ。覚えていないのか？」
た、倒れたっ！？温室って！？
確かあたしは、昨日シャルルと一緒にベッドに入ったはずだった。
「どういうこと？あたし、あんたと一緒に寝てたじゃない。一体どういうこと？」
あたしが何が何だかわからない、というような素振りをしていると
「マリナ、君は記憶が無かったんだよ。何も覚えていなくてね。オレの事もわからなかったんだよ。
それが温室のバラの香りがきっかけになって、記憶が戻ったらしいね。
記憶のなかった時のことは覚えてないようだけれど・・でも君はオレのところに戻ってきたんだ。
いつものきみに戻ってくれてオレはうれしいよ。」
瞳を輝かせてそう言ったシャルルは、息も出来ないくらい強くあたしを抱きしめ、
唇にやさしくキスをした。
「マリナちゃん、オレの事はもう忘れないでくれよ。君は覚えていないようだけれど、
オレはずっと君のそばにいるって言ったんだからね。」
シャルルは灯りを消してさっきよりもっと熱く長いキスをした。
み〜さん こちらに作品を送ってくださりありがとうございます。マリナちゃんの記憶が
ないという、これまた美味しい設定で、ロマンティックで、春見が昔見た映画「時をかける少女」
を思い出してしまいました（古ッ）
ですけど、シャルル献身的でありますね。やっぱりマリナちゃんが相手でありますと、こうも
尽すのかと思うと、ウハウハです。ありがとうございます。堪能させてもらいましたわ。み〜さん