優しい雨の降る夜の訪問者
その夜は静かに雨が降っていた。静かで心地よい夜。
オレはパリで起こった連続殺人事件の被害者の解剖、容疑者のサンプリングのためここ数日
オートエコールに泊り込んで働いていた。
おかげで事件は佳境を迎え、今週末にはここを出られるだろう。
早く恋人に会いたい。抱きしめたい。
仕事に集中している時は そうでもないが、こんな静かな夜は無性に会いたい気持ちがあふれだす。
先日なんて電話をかけたら、寝ていたらしく機嫌が悪 くすぐに切られてしまった。
自分の想いは彼女には重すぎるのだろうか。想いの比重は当然オレのほうが重い。まあ、どうしようもない位惹かれているのだからしょうがないのだが。
その時、ドアをノックする音が響いた。
｢開いてる。｣
カークが事件の経過状況を報告に来たのだろう。ドアを開けるとそこに立っていたのはマリナだった。
｢マリナ？｣
驚いて呟くと彼女は、はにかみながら言った。
｢えへっ、来ちゃった。陣中見舞い。今大丈夫？お茶でも飲まない？｣
｢ああ、ちょうど一息つこうと思ってたところだよ。いきなりで驚いた。でも、うれしいよ。｣
部屋に入ったマリナは、長いすのソファをに腰掛けた。オレも彼女の隣に腰をおろす。
｢どうせなら、お茶より酒が飲みたい気分かな。｣
｢あんたのことだから、そういうと思ってシャンパンも持ってきたわ。｣
マリナは微笑みながらボトルを見せた。グラスにシャンパンを注ぐ。
グラスの底からのぼり立つ気泡ごしに幸せそうなマリナを 見つめる。
こんな穏やかな気持ちは久しぶりだ。
｢なぜきたの？｣
オレはわざとたずねた。
マリナに言わせたかったから、するとマリナはオレの気持ちが分かったらしく,唇をとがらせて、
オレ の左手をぎゅっと握った。
言葉はいらない、か。
マリナの頭をぽんぽんとたたきながら言った。
｢会いたかったよ。マリナちゃん。君もだろ？｣
｢うん。なんか会いたくなってきちゃった。仕事どう？｣
いつになく素直なマリナに驚いた。
ああ、最近仕事ばかりでろくに彼女との時間が取れなかったから。
マリナもオレの仕事の邪魔をしないよう気遣ってくれてたのだろう。
｢ああ、だいぶめどは立ったよ。このまま行けば週末には戻れそうだ。来週には休暇が取れそう
だから、どこか旅行にでも行こうか。｣
｢えっ、本当！？うれしい！どこに行こうか。｣
マリナの顔がパッと明るくなる。彼女がそばにいるだけで、自分の疲れが薄れていくのだ。
｢来てくれてありがとう。｣
するとマリナがオレにしがみつき、胸に顔をうずめた呟いた。
｢会いたかったの。寂しかったんだから。来週はあたしのことかまってよね。｣
腕をまわして彼女を抱きしめた。同じ思いを抱いてくれたことに、胸が熱くなる。
そんな事を言うマリナがたまらなくかわいらしく思え、髪に顔をうずめた。
腕をほどいてのぞきこむと彼女は瞳を閉じた。
頬を傾け、唇を重ねる。最初はやさしく、しだいに深くくちづけた。
久しぶりのキスに自分が熱くなるのを感じる。
唇をはなし、彼女をソファに優しく横たえた。
｢いい？｣
マリナはコクンとうなづいた。マリナの耳たぶを甘噛みし、唇を首筋、鎖骨へと落としていく。
マリナは腕をまわしオレを抱きしめた。
マリナのブラウスのボタンを、一つ、二つとはずしていく。
その時、再び扉をたたく音が部屋に響き渡る。
｢シャルルッ、犯人が自供し始めたんだっ。取り込み中のところ悪いが、ちょっと出られるか？｣
なんてこった、カークだった。
行かざるを得ないだろう。
しかし、取り込み中ってなんだ？
オレがマリナといることを知っていたのか？
オレは身体をおこし、立ちあがった。
｢シャルル？大丈夫？｣
目を潤ませ、頬を薄紅に染め、オレを見上げるマリナ。
彼女のブラウスのボタンを再びとめなおし、オレがつけたピンク色の傷跡を隠す。
名残おしそうにマリナの唇に優しくキスをした。
｢ところでマリナ、君ここに来るときカークに会ったかい？｣
｢うん、会った。｣
なるほど、
｢ごめん、ちょっと行ってくる。オレの部屋で待ってて。続きはその後だ。｣
目を輝かせ微笑み、マリナを見つめた。
｢わかったわ。待ってる。早く戻ってきてね。｣
マリナは少し照れくさそうに微笑んだ。
マサムネさんから、初創作を送っていただきました♪ 甘いお話で、春見はにょろにょろと
蛇のように身体をくねらせながら、読んでいたら…………やってくれましたね、カーク。
健全そうにしてながら、人の恋路を邪魔するとは(笑)←笑ってる場合じゃありません。
ですが、シャルルがマリナちゃんが好き好き〜な心情がとてもよくでていて、春見はうっとりと
してしまいましたよ。さっさと、仕事なんて片付けて、ぜひぜひ続きを…なんて♪
やっぱり、マリナちゃんもシャルルと会えないと、寂しいのねェ（嬉）
マサムネさん、ありがとうございました♪