第一級恋愛罪
恋人であっても、夫婦であっても、表向きは禁じていながら、禁を犯し、別の人間と恋に陥ることもある。
恋してはならない人など、この世にあるのだろうか？
なら、どうして好きになるという感情を、神は与えたのだろう？
天使の名を持つ美しい少女、アンジェリーク。
あの美しさと清らかさは、どんな女の人だって色褪せて見える。
俺は物狂おしい恋をした。
とうとう意を決して告白をしたけれど、君は困った顔をしてこう言った。
「ごめんなさい。ランディ様」
恋は終わった。
なのに、諦めようとしても、心が従わない。
そんなある日、彼女とあの男が一緒に歩いてるのを見てしまった。
豊かに咲き誇るバラよりも綺麗だった君。
俺は、ただただ黒く、深く、沈みゆくばかり。
「お願いです。写真を返してください…」
瞳に涙を浮かべて懇願する君を、他人事みたいに眺めていた。
俺達以外には誰も居ない部屋の中。完全なる密室。
俺と君だけ。
「俺が返すと思ってるの？」
この写真があるだけで、こうも態度が違う。
あの男によっぽど知られたくないらしい。
「……あなたの良心は痛まないんですか？」
震える声で君は言うけど、そんなものはとっくの昔に捨てている。
だから痛むことなんて何もない。
「これが君と俺との繋がりだもの。そう簡単に返すわけにはいかないよ」
そう、たったこれだけの繋がりでも俺にとっては重要。
「………身体だけ…繋がっても意味がないでしょう」
憮然として、君は答えた。
「そうでもないよ。少なくても君を抱くことができる。」
腕を伸ばし、君に触れた。
戦慄が駆け巡る。
柔らかさと冷たさを備えてるその肉。
「……最低…」
睨みつけるその瞳でさえ、なんて綺麗なんだろうと思う。
「君が好きだよ…例えあの男を君が好きであっても」
くちづけを交わそうとすると、きつく唇を閉じ、あくまで侵入させまいとする努力がいじましい。
それを無理やりこじ開ける時の歓びを知っているだろうか？
モラルに反しているからこそ、燃えあがる。
服を無理やり奪い取り、抵抗する彼女を押さえつけ、肉を貪る。
「やめて…ください…これ以上嫌いになりたくないのに」
「好きになってくれないのなら、どっちにしろ一緒さ。なら俺は君を奪う」
白い肌に、わざと赤い印を刻み付けた。
「……感じない？ もうこんなに尖ってきてるよ。君の乳首は」
わざといやらしい言葉を投げかけた。
君はもう黙ってるだけ。なされるがまま、身体を俺に投げ出した。
でも心までは渡さないという表情をありありと浮かべて。
それでもいい。
君の心は絶対、俺に振り向かないだろう……ならばせめて…
君の薔薇の花びらのような唇から洩れる呻き声を聞き流し、俺はその身体に俺を刻み続ける。
震える身体を押さえつけ、どこまでも続く執着を道連れにして、逃げ出せないように君を抱きとめる。
柔らかな襞に囲まれ、温かな君を感じながら、このまま死んでもいいとさえ思える快楽に溺れ、
君の中で昇りつめるその瞬間、
「助けて……ヴィクトール様……」
君はそう叫んで、意識を手放した。
全てが終って、俺の腕を枕にして君は寝息をたてている。
抵抗もなく、深い眠りについた君を、俺はどれだけ見つづけてることだろう。
君は知らない。
そして、ずっと俺の気持ちを知ることはないだろう。
それが俺に課せられた罪。
君がどれほど傷ついてるかわかりきってるからこそ、受ける罰。
「ヴィクトール様………」
君の心の拠り所が、いつまでもあの男にあるという現実を突きつけられる。
俺は救われない。
いくら俺が抱いても抱いても、果てても、燃え尽きても、決して君はその身内を熱で火照らせない。
君の身体は開かないし、蜜も溢れない。
俺の身体の下で、しおれたまま。
「君は切ない残酷だね」
心の奥底から切実に出した声でさえ、君には届かないのだから。
２０００年３月のランディくんの誕生日に限定でUPしていたのを手直しして、今回またUPしました。
今世紀を締めくくる話がこれだというのが(^^ゞ でもね〜 私はね、ランディ君に夢を持ってるんですよ〜
鬼畜ぶりが目につくでしょうが、それは勘弁下さい。こういう情熱が私は好きなんですから（笑）
アンジェにとっては災難以外の何物でもないですが。